7歳と31歳の誕生日

 明日は誕生日だー。まだ「特別な日」として、この日を喜べることが嬉しい。もっと歳をとったら、喜べなくなる日もくるかもしれない。
 でも、明日の31歳の誕生日は嬉しい。朝6時30分に家を出て、夜7時までほぼまる一日休日出勤で、ボスと一緒に絵本販売をするという、とても誕生日とは思えないタスクがあるけれども、それでもやっぱり誕生日は嬉しい。
 去年から今年にかけてハマっていたGilmore Girlsでは、母ローレライと娘のローリーは、「ローリーの21歳の誕生日はAtlantic Cityに行って、カジノで“21”をプレイして、一攫千金(する前提)したお金をそのひと晩で使い果して遊びまくろう!」と、ローリーが小さいころから話して楽しんでいた。結局それは実現しなかったのだけど、そのエピソードを聞いて、ものすごくうらやましくなってしまった私も、「この誕生日はこれをする!」という楽しみがほしくて、31歳の誕生日は「サーティーワンを食べまくる+友達にも強制的に食べさせる」と決めた。今日の時点で、明日はフルでお仕事が確定しているので、まる一日遊び呆けるサーティーワンプランはできないかもしれないけれど、でも、誕生日はやってくるんだから、それでいいのだ。

 ちょっと話は戻って、先週の土曜日の話。台所のテーブルの隅においやられていた、ペットボトルのおまけ「ペットボトルのふたで植物を育てよう」(?)を見つけて、どうせ家の人は誰もやらないんだから、たまにはやってみようと思って、ちいさなちいさなキャップに種を植えてみた。長ネギと三つ葉の二種類。付録セットのなかに、水を吸うと膨らむ土までついていて、びっくり。気がきく、というか、本当に細かいところまでご苦労さん、という気持ち。ベッドで寝たきりの婆ちゃんが、この小さなキャップから芽が出てくるところを観察できたら面白いだろうと思って、婆ちゃんのベッドの横に置いた。
 種を植えることが楽しくなってしまった私は、家の中から、婆ちゃんが数年前に自宅の庭で回収したアサガオの種も植えた。なぜか家に腐葉があって(お母さんが土と間違えて、買ってきてしまったみたい。だけどここで大活躍、笑)、それを土の上に散らしてみたりした。栄養になるかな、と思って。

 それから数日は「まだ芽がでない、まだ芽がでない」と、メイちゃんのように毎日見に行った。そしたら4日目の夜、キャップの中からチョロリと白い管のようなものが見えた!もうすぐ31を控えた私だけれども、「やったー、見てみて!」と大さわぎしてしまった。外のアサガオを見に行ったら、なんと10cm近くも伸びていて、青々とプランターに茂っていた。植物って強い。すごい。びっくりした。これは久しぶりに味わった嬉しさだった。久しぶりっていうか「初めて」のほうが正しいかも。小学校の時に、種を植えて育てるって一度くらいは経験しているはずなのに、その時の記憶も感覚も全然覚えてないんだもの。ああ、かなしいねー。記憶って恐いねー。だから、30歳で経験したこの感動は忘れないにしよう。そのためにもちゃんとこうやって書いておきたいと思って、これを書いてる。

 さて、7歳の誕生日って何のことかというと、それは今朝の話。今日は少しだけ早起きをしたので、朝一にベイビーちゃん達の成長を見に行った。

<ここでひと言メモ。私はたいてい、ギリギリのギリギリまで寝ていて、起きてから20分後には通勤電車に乗っているという女性としては珍しいタイプなんだけれども、さすがに今年の夏は暑すぎて、冷房がないうえに日当たりばっちりという私の部屋では、とうてい寝ていられなくて、起きてしまったというのが本当のところ。>

 家を出るまでにまだ余裕があるからと思って、食卓のテーブルでお母さんが皮をむいてくれたモモを食べながら、「聞いてよー、明日誕生日だっていうのに、ボスと仕事だよー。ひどいよねー」とお母さんと話していたら、となりのテレビがある部屋(我が家ではおせじにも「リビング」とカタカナで言えるような部屋ではないので、「テレビがある部屋」と言う)から、モンスターダディの声が……。
なっちゃん、7歳の誕生日覚えてる?」
「7歳? 全然覚えてないなー。私の誕生日なのに、誕生日ケーキが(弟と妹の好きな)チョコレートケーキだったのはよく覚えてるけど」(私は白い生クリーム派)
私の返事は全然聞こえなかった様子で、(さすが、都合のいいことしか耳に入らないわがファミリー)
なっちゃんの7歳の誕生日は特別だったよー。シンディさんが誕生日ケーキを焼いてくれたんだよ。サンディエゴズーに行ったんだよ。覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ。一方向の車線が、7本(もっとあったかもしれない)もあるでっかい道路あったよね」
「What? (よく聞きとれなかった様子で)そうねー。あった。」

 ここまで話して、気が付いたら8時50分になっていたので、57分の電車に乗るためにダッシュして家を出てきた。家を出る時は電車に間に合うことしか考えてなかったけど、ひとたび電車に乗って落ち着いてみると、最後までちゃんと話を聞いてあげられなくてかわいそうなことしたな、と思った。うちのダディはとにかく「人と話したい」人だからね。

 そんなことを思いながら、あんな短い会話だったのに、「私は7歳の誕生日に、サンディエゴズーに行ったんだ」と言うことを思い出させてくれて、すごく嬉しくなった。すっかり死んでた記憶が、生き返ったんだよ。よみがえりだよ。何ももらってないのに、誕生日にすっごい特別なことしてもらえた気分。それで十分。十分すぎるくらいだわ。
 その7歳の誕生日の細かいことは覚えてないんだけど、家に帰ったらその時の写真をお母さんに探してもらおう。そんで、もっといろいろ話しをするネタにしよう。お母さんもひっくるめて、みんなで会話する、それが楽しくできれば一番いい。

 やべ、今これ会社でサボりながら書いてるんだけど、自分で書いてて涙でてきそうなってきた(笑)。誕生日の前日なのに、盛り上がりすぎだな。
 よし、明日はなんとしても、サーティワンのアイスを食べるんだい。
 それができたらハッピーハッピー! ハッピー31歳。