BABEL (2006)
4.4点

監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本: ギジェルモ・アリアガ
音楽: グスターボ・サンタオラヤ
出演: ブラッド・ピットケイト・ブランシェットガエル・ガルシア・ベルナル役所広司菊地凛子二階堂智

BABEL
旧約聖書』の「創世記第11章」にある町の名。町の人々は天まで届くバベルの塔を建てようとしたが神はそれを快く思わず、人々に別々の言葉を話させるようにした。その結果人々は統制がとれずばらばらになり、全世界に散っていった。これを背景に、「言葉が通じない」「心が通じない」世界における人間を描く。

あー、そうだったそうだった。「バベルの塔」ってなんだっけ?って映画を見終わってから気になって調べたのが上記。人間の言葉を分けたとされる塔だったね。(そういえば語学学校(翻訳学校)にもバベルってあるね。納得。・・・納得はしたけど、そんな名前のついてる語学学校ってどうなんだ?っていうモヤは残る。)

映画の中では特に「言葉」にはこだわりはない。人間は生まれながらにして決定的に何かで隔てられている。言葉、人種、国、文化、後天的先天的な個人の人生そのもの、そういったすべてのモノに紡がれて異なる人生を歩んで行く。隔てられているんだけれども、でもいろんな因果関係の末やっぱりどこかで影響し合っている。関係ないようでいて、みんな関係ある・・・これが主題、メインテーマ、訴えたいこと、見て欲しい事・・・。そうね、私も頭の中では分かっているんだけど、こうやって映画としてまとめてくれちゃうと本当にズシンと重く圧し掛かってくるよね。見えていないから考えなくていいやってなってしまっている思考を「考える」思考にしてくれる、それがこの映画のいいところ。町山さんのラジオとか聞くようになってから色々と感化されているんだけど、どんな映画がいい映画なのか、ってそんなの正解も不正解もないけれど、でも「人に何か考えるテーマを与える、問いかける」っていうスタイルの映画はやっぱりとても映画としての価値は高いものであると思う・・・ようになったのよね、私も。最近はやけに軽い映画ばかりチョイスしているなっていう自覚があったから、それであえてこの映画を見てみたんだけど、思考変換にはズバリ最適でした。一つの世界で隔たれている環境を象徴するために、アメリカ、メキシコ、モロッコ、東京エリアのストーリーをミックスして(時系列もミックス)あるんだけど、その中に東京が含まれていて、それも私が思うにはとても力を入れて描いてくれているようで、結構バカにできないと思ったなー。菊池凛子さんこの映画で助演女優賞ノミネートだったけれど、そもそもこの映画は主演がいるのかな?みんな同じくらいの重みをもった役どころな気がするんだけど。みんな少しづつ主演・・が正当じゃない?それじゃやっぱりブラピが納得いかないのかな。あくまで個人的な推測だけどね。だってこの映画莫大な費用かかったって言うけれど、なんと経費を苦しめていたのはブラピ家族一行様(ジョリー+キッズ)のモロッコ超一流ホテル滞在費だったとか・・・。さっすが・・・エー、でもせっかくこんなにいい映画作ったのにそんなエピソードは本当に要らぬ〜!!かなしー。
舞台になるエリアの数だけ、それぞれ異なるストーリーがある。その個々がはらんでいる問題・状況がまたリアルタイムなのもいいところ。根本的に時代を超えて常に健在している問題なんだろうけど、その描き方がちゃんと現代版になっているところは嬉しかったよ。やっぱり東京エリアに気持ちが入っちゃうんだけど、聾(ろう)の女子高生に焦点を当てつつも、「今の若者に見えている東京」がちゃんと(って言っても外国の人が製作しているものだから100%すごいと思えるものじゃないけれど、でもそれなりに"ちゃんと"。)見えるよ。センター街とか、クラブとか、大沢伸一とかね。あとモロッコエピソードでは、瀕死の妻に寄り添い世話をするあの愛に心打たれました。ケイトブランシェットさんって、あまり他の映画まだ見たことないんだけど、なんか気品のある高級なタイプの女優さんって感じがしちゃう。なんだろ、名前からの印象なのかなー。でも、ま、ブラピとケイトブランシェットさんにあんなの演じられたら誰だってギューン!っと心捕まれちゃうよね!そうであって欲しい。私は見事に捕まっちゃったわ。メキシコのエピソードでも、やりどころのない憤りが描かれていて、やはり何かこみ上げてくるものがある。個々のエピソードもなかなかいい、そしてそのエピソードすべてがリミックスされて組み合わさった映画全体として表現しているものもとても心に響いたね。響いた結果・・・・結果・・・・結果がどうなるかは分からない・・・けれど、でもちょっとだけ今まで見えていなかった世界がのぞけたことで、今後少しづつこうやって世界を見ていける力がチョロっと(毛が生えた程度くらいのチョロね)芽生えたかなー、なー、どうかなー。だといいなー。だといいね。
映画 バベル - allcinema
Babel (2006) - IMDb