テロリストのパラソル (1998)
藤原 伊織

やっぱり男性作家の作品だよね。いやー、名前を見たときはまさか女性がこれを書いたの!?と思ってびっくりしたんだけど、調べたらやっぱり男性。ジャンルは「ハードボイルド」。このジャンルってものすごく当たりハズレが激しいと思っている。個人的に大沢在昌さんはイマイチだった。でもこれは面白かったー。吸い込まれたー、サラっとノンストップで読んじゃった。展開のテンポがいいよねー、後半いろんな関係者がギュッといきなり繋がるところは「そうきたかー」と思わず手のこみように参りました。後半にたどり着くまでも、主人公の菊池の人間味だけで読ませるところは十分あるし(ハードボイルドの象徴であるアル中、体育会系、恐い系、でも忘れちゃいけない人情と優しさあり・・・ってこんなんでいいのかな、ハードボイルド人間の記号要素って・・・)、彼に関わってくるヤクザの浅井とのやり取りがすっごくかっこいいのよね。男同士のプライドを保ちつつ、相手を気遣いづつ、駆け引きをしつつ、でも決して安い言葉は使わない、みたいな、ま、インテリな人たちの会話なんだけど、それがアル中とヤクザの会話でそこに少しづつ信用が芽生えてくる工程が嬉しくなっちゃうんだよね。大まかな舞台が新宿なんだけど、電車で読んでいたら今日は銀座に行ったのに、行くまでずっと自分は新宿に行くような気持ちになっちゃった。って、分かるかしら?本の世界に入っちゃうんだよね、家を出る時もこの本を電車で読むことが楽しみで仕方なくて出発すると、本当の行き先に関わらず、まず本の世界に飲み込まれちゃうみたいな・・場所が新宿だっただけに、なんかやけにそんなブックスリップ(タイムスリップにマネてみた・・・ちょっと違うか・・・)をしてしまいました。もう終わっちゃったよー。行きで残りの全部読んじゃったから、帰りの電車で読む本がなくて寂しかったわ。やっぱりこういうときは"いざ"(読む本がなくなっちゃうこと)に備えて、二冊持ち歩かないとだめかしらねー。荷物重いの嫌だよー(笑)。