ねにもつタイプ (2007)
岸本 佐知子 著

読んでいて、自分が子供の頃の感覚に引き戻されて、それもかなりディティールが細かく蘇ってくる感覚で、不思議な不思議な気持ちになりました。不思議というのは、私の中に絶対に潜んでいる思い出や過去の出来事なんだけど、今まではすっかり忘れていたような懐かしい「妄想の世界」のこと。このエッセイは子供時代の思い出だけでなく、大人になってからの岸本さんの思考ももちろん書かれていて、私はものすごく共感できる。「そうそう、その感じ方あったあった(あるある)、わかるー」という同じ種類の楽しみを持っている人なんだってわかったのは本当に嬉しい。涙が出ちゃうくらいうれしい。さくらももこのエッセイを読んでいるのと似ている「うれしい」です。
そして、今日はこの本にとても助けられた。
3月に借りてまだ返却していなかった本を、早く早く返さなくてはと、やっと今日久しぶりに図書館へ出向く。返却のお願いハガキをもらったのは何年ぶりでしょう。お恥ずかしい・・・。でも図書館とは永く付き合って行きたいので、早く早くと・・・やっと今日。そして懲りずにまた本を借りてきた。この本はそのうちの1冊。岸本佐知子さんの翻訳本を読もうと思って検索したら、このエッセイがおもしろそうだったので「ノリーのおわらない物語」と一緒に借りてきた。だいたい13:00に電車の中で読み始めて、今日の予定をこなしながら、日付の変わる00:00には読み終わっていた。はあ、本を開くたびに子供の頃の不思議な感覚に出会えることが楽しくて楽しくて、とてもわくわくするよ。くくく、と心の奥が懐かしさと嬉しさでたまらなくなるのです。いろんなポイントでね。数え上げればきりがないんだけど
「ぜっこうまる」・・・小学五年生のある放課後の話。友達が秘密を打ち明けるというので体育館の裏庭に集まっている時の状況が、大人になった今でもなんどもリプレイされてしまう。今思えばそんなに重要なことでもないんだけど、でも不思議に頭の中にキレイに鮮明に焼き付けられてしまったある瞬間、時間、そんなものあるよね。そういう話。ここでは、体育館の中にいる男の子がな・ぜ・か・ウィンクをしたっていうのが、KEYだよね。ん、ん、それ私もなんとなくわかる。
「ホッホグルグル」・・・読んでいてすぐに自分の体験談が浮かんできてしまった。これが図書館の本じゃなかったら、すぐに書き込んでるね。私だったら安室奈美恵スーパーモンキーズ「太陽のSEASON」イントロ VS カミセンの「theme of Coming Century」(作詞:ジャニー北川、ここポイント!)のイントロだね(笑!!!)。
で、帰りの電車の中。終電なので人も満員、しかも酔っている人が多い=ふざけている奴が多い−−私の隣に少し酔っているカップルが来た。もうかなり眠そうな彼氏。でも途中から乗ってきて座れる場所なんてありません。つり革を両手でつかんで、立ったまま寝る体制に入る。そのままおとなしくしてればいいものを、電車の揺れに合わせて自分も揺れるのが楽しくなちゃったみたいで、揺れのリズムにのって隣の彼女のところへ体を振るんだよねー。ということは、彼女とは反対の彼の隣にいる私の方へもその振りはやってくる訳で、かなりの迷惑。いやな位置に立っちゃったなーと思っていたんだけど、数分後彼女が彼に何かを話しかけると、彼は急にまっすぐ立った。「ついに注意したか」と思ったんだけど、その次の瞬間「は!待てよ」と思ってしまったー。その時私が読んでいたのがこの本だったから、タイトル見てみて。「ねにもつタイプ」!どうだろ、これが効いたのかなー。真相は分からないけれどでもこれで無意味なかれの揺れ攻撃を受けなくて済んだのだからよかった。そして、電車を乗り換えて、別の電車。こちらでは、明らかに私の前に座っていた人が降りたので、「やっと座れる・・・」と思って体を前にのめりだしたら、もう私が座ろうとしているのに、横から何くわぬ顔で横からグイっと体を割り込ませて、その席を別の女性に取られてしまった。同年代くらいかな。ずっと携帯やっている女の子だった。キィー!!と思いつつ、その時点ではもう本は読み終わっていたんだけど、「キラーン」とひらめいてしまい、サッとこの本を目の前で広げてやった!!あー、このとき気分爽快だったなー。私かなり嫌な奴かしら。。。そうかも。。。。でもその彼女は携帯ずっとやってたしな、私のこんなささいな抵抗には気が付いてすらいないかもしれないよね。
こんな事もぜんぶひっくるめて、この本はよかったよ。岸本佐知子さん、翻訳家としてじゃなくて人として好きです。
全然関係ないけど明日はネモツという友達に会います。