幸福な食卓 瀬尾まいこ著 (2007)
「卵の緒」をラジオドラマで聞いて、非常によくて、その次に教えてもらったのがコレ。まろやかだよね。文体も、ストーリーも、文庫本の中にでてくる文字のフォントすらまろやかに感じました。そして文庫本の表紙の手触りもです。現役で国語の先生であるということなんだけど、「国語の教科書」的な独特の「良さ」がありました。テレビドラマでいう「NHK」モノみたいな。なんというか毒がなくて、妙にうなずけて、そして些細で日常的で極度におかしいところもないのに、「普通」の中に気持ちのよいパンチが効いてる、みたいな!なんか表現難しいねー。でもそんな感じよ。国語の教科書に載ってる作品とかって、当時教科書として使っていたときはそのセレクトの良さとか、編集の具合とか、全然こだわりもみえなくてたいした事ないと思ってたけど、今読み返してみると、とってもありがたい貴重な一冊なんだよね。何から何までイイって訳じゃないけど、「ばかにしちゃいかん」とは思います。この作品はちぐはぐなんだけど「家族」が温かいことと、主人公サチコと大浦君の恋愛がとっても素直で純真なところと、各キャラクターの個性の出し方がうまいところが、全部よかった。
サチコが学級員に選ばれちゃって、クラスのみんなが合唱の練習に全然参加してくれなくて困っているときに、大浦君に相談するよね。あのシーンとがとても刻まれたな。「クラスの強い男子を見方につけろ!」って。「ん?」と思うんだけど、でもその後、相談した男子がとても物分りのいい子で、クラスの団結力が復活していくんだよね。こういう中学とか高校ならではの出来事とかそれに関する心境とかがとってもよく書けていて、それもまた良かった。私も中学の頃のことすごく思い出したわ。それからシュークリーム作りたくなったし、食べたくなったね。さすがに12個は無理だけど。大浦君はかなりイイ奴だよ、かっこいいよ、性格が!!こんな同級生欲しかった。