神たちの誤算 (2002) / 渡辺 由佳里 著
普段使うかばんをコロコロ変えていると、いつもかばんに携帯しているものがかばんの中にない!ってことがよくあって、読んでる途中の本をかばんに入れるのを忘れちゃうことがしばしばあるのよね。それで電車に乗ってから、「ガーン、ショック」。楽しみにしてた本忘れた…。昼休みに読む本がなくて、たまたま会社の人の机の上に置いてあったこの本をちょいと拝借してみたのがきっかけ。最初はその日のお昼の間だけイントロを読めればいいかなと思っていたんだけど、これがハマってしまった。
アメリカの総合病院の産婦人科で働く日本人の女医、夏生(ナツミ)を巡るお話。面白いのは、日本人の視点でアメリカの病院や医療現場の実態、さらに不妊療法、中絶問題、そこにかかわってくる厳格クリスチャンの宗教的問題、人工授精(体外受精)と、アメリカの住民の階級と保険制度などが細かくそれもかなり詳しく(病気の名前など専門用語結構多い。でもジャマにならないからちょうどいい。)ストーリーの中に盛り込んであります。アメリカの病院や、医者の存在ってやっぱり日本とはかなり違うのよね。お金のないやつは助けません。という主張が明らかに見えるもんね。日本だって問題はあるけれど、でもアメリカのそれはやっぱりかなり問題あると思う。本作では主に、産婦人科に焦点を当てているんだけれども、産婦人科の中でも、出産時に子どもを取り上げる専門家、中絶の専門家、不妊治療の専門家、というように専門性に別れて、各医者の主張が全然違うのよね。生まれてきて1年も生きられないということがわかっている赤ちゃんについても各医者の意見はバラバラ。産むべきか、産まないべきか。人にこんなにも悲惨なことを選択させないといけないのか、といった意味でタイトルが「神たちの誤算」となっているわけです。
そして病院の話とは別に、キャリアのある女性である主人公が将来のパートナーについて、結婚について、悩むような話もでてきます。そして結構アメリカの環境についてリアルに書かれているところがすごいなと思いました。さすが、著者が長年ボストンに住んでいるだけあるね。渡辺さんのもう一冊の「ノーティアーズ」も読んでみよう。(今amazonで注文したとこ。)