老人と海 (1990)
監督:ジャン・ユンカーマン
音楽:小室 等




今日、早稲田大学の小野記念講堂でこの作品を見てきた。目的は監督にインタビューするため。インタビューの前に作品の上映会があるというので、インタビューのためにもちろん見させてもらいました。実は私は前日まで、ユンカーマン監督のこともこの作品のことも知らなかったのに、今日いきなりインタビューに行くことになって、その場で映画も見せてもらって、また今までしらなかったような大きなことを教えてもらいました。
「映画」と聞いて、反射的に「どんなストーリーかなー」「好みだといいんだけど」などと思っていたんだけど、これは(私にとっての)ニュー・タイプドキュメンタリーでした。大物俳優がズラリと出ている映画ばかり見ている私が悪いんだけど、今まで私が見たことのある「映画」ではなかった。はたまた、「ドキュメンタリー映画」でもなかった。ニュー・タイプ。
「映画」=ストーリーがあるもんだと思ってたいたけれど、これは「ストーリー」ではなく「ライフ」の映画だね。ドキュメンタリーなのに、まずナレーションがない。ただひたすら、与那国島の漁師の生活を追いかける。その中には、男の思い、妻への愛、村そのものや村人との共存など、たくさんのテーマがあるんだけど、どれにも偏っていない。ナチュラルな、ノーマルな「人生」なのです。
アメリカ人の監督なのに、日本のこの漁師に興味を持って、長い年月をかけてこの映画を作ったのだと思うと、本当にすごいなーと思う。ユンカーマン監督は、映画監督であるよりも実はジャーナリストとしての活動期間がながい。ジャーナリストとは、「真実を見せる」ことが目的。だから、監督はこの映画でナレーションをつけなかったのはとても難しかったという。だって、本当は語りたいことがたくさんあるから。でも、あえてそこは観客を信じて、余計な説明は一切入れないことにしたらしい。ことばで語らなくても映像が語ってくれる部分があるから。芸術的な視点を大切にする映画監督と、もっとみんなにちゃんと伝えたいと思うジャーナリスト、このふたつの側面をもっているってどんなんなんだろう。私はどちらにも憧れるから、それができるってうらやましいな。

まったく知らなかったものやことが、ふいにこうして自分に訪れるっていいね。もちろん毎日ってわけにはいかないけど、でも今日はいいことがひとつあったってことだ。よかった。