八日目の蝉(2011)
4.5点

ケーブルテレビで番組表をリサーチしていたら、ちょうどやっていたから見た。前半20分くらい見逃しちゃったんだけれど、それでもストーリーの合間に全体像をつかめるような挿入がいろいろあったから、途中からでもすぐにわかった。

かおるちゃん(私はあえてこちらの名前で呼ぶ)が、子どものころ誘拐されていて、実の母親ではない人に育てられていた過去があり、実の両親の元に戻ってきてからは、精神的に崩れてしまった母親とうまくいかず、幸せな家庭の思い出がない……という設定。

かおるを誘拐した母(永作博美)と何もしらない子どもの頃のかおるが仲良く愛情いっぱいに生活している時代。そして大学生になったかおるが自分の過去と向き合おうと、誘拐された頃の自分の記憶をさかのぼっていく現代。ストーリーはこのふたつの時代が交互に語られる。現代で、かおるに過去のことを思い出させるきっかけをつくるのが小池栄子。彼女ってすごく本物の女優になってきてたんだね。ものすごくいい演技してたよ。もちろん一番スゲーと思うのは永作博美なんだけど、その次は小池栄子だね。彼女の役もやはりつらい過去を持っていて、かおると一緒に香川に行ったときにホテルの部屋で言ったセリフ「ダメ親でも二人いればどうにかなるよ」には深い感銘を受けてしまった。正直、そこがいちばん心に残ったシーンかな。
そこから後半にかけてはもうずっと泣きっぱなしだったな、私。花粉症で鼻水も涙もかなり消費しているはずなのに、まだこんなに出るのかっていうくらいずっとズルズルやってたよ。子どもの頃のかおるちゃん、女の子なのに男の子の服を着せられて(もらったから)、みすぼらしい雰囲気を出してるところが涙を誘うずるい要素なんだけど、田舎の人のやさしさ、かおるにキレイなものをたくさん見せてあげたいという母親(永作)の思いが、まっすぐでさ、私そういう愛情ストレート系に弱いんだよね。やっぱり、生みの親より、育ての親の方が心がつながるって本当にそうだと思うな。血の濃さよりさ、心のつながりの強度の方が私は信用できる。
ザ・日本という演出なんだけれど、挿入歌としてジョン・メイヤーの洋楽が何度か入ってくるのがとても印象的だった。それは、合わないんじゃなくて、日本の田舎の懐かしい風景と妙にマッチしている、つまり想像以上に音と映像が合っていることが印象的だったの。あ、インテリアとか食だけじゃなくて、映画にも和洋折衷っていいんだと思った。
私も31になってさ、母性とか母親になるとかちょっと意識してるのかなー。まだ自覚はないけれど、でも確かに涙もろくなってきてるいし、特に子どもが絡んでくる家族もの、親子もの、それも母子家庭の話には特に弱いですわ。ああ、もうだめだ。目真っ赤だよ。ひどいひどい。明日腫れるな、こりゃ。
2時間30分近くあるけれど、これはよくできた、とても良作だと思います。
この映画が日本アカデミー賞とっちゃったから、三谷幸喜の『ステキな金縛り』が取れなかったのは、それはそれで残念なんだけど、でもこれはいい映画だと思うよ。
あとびっくりしたのが、原作が角田光代さんということ。どちらかと言うと、実際の事件を小説にする桐野夏生さんのほうかなーと思った。角田さんの本もうちょっとちゃんといろいろと読んでみよう。今までは結構食わず嫌いしてたかも。

最後にもうひとつ。日本の映画でいいなと思うのは、都会ばかりじゃなくて、地方の魅力をぐっと高めてくれるところ。やっぱり日本は都会よりも、地方のほうが絵になるし、日本人の心に訴えるのに強い要素を持っている気がする。映画になることで、旅行に行きたくなる人も増えるだろうし、そういった効果も合わせて、日本映画これからもがんばってほしいです。はい。