5万年前―このとき人類の壮大な旅が始まった(2007)
著者: ニコラスウェイド, (監修)安田喜憲, (訳)沼尻由起子

えー、初めてこのようなサイエンス的科学専門書を読みました。サイエンスと言ってもね、「化学」じゃなくて「科学」ね。DNAとかヒトゲノムとか遺伝子とかそういった類の人間科学にまつわるもの。ヒトゲノムだー、DNAだーとよく耳にするようになってから少しは気になっていたけれど、ま、どうせまだ研究者の人たちがせっせと解明を進めている段階で、私のような一般人が理解できるようになるにはまだ遠いかなーと思っていたのよね。しかーし、それでもやっぱり人間=自分に関係する、それも自分や祖先を解明する鍵となる要素「遺伝子」となれば興味が沸いてきて、面白く読めちゃったのです。
正直、世界史の中でも古代史以前の事なんて深く考えた事なかったし(教科書に載ってないもんねー)、人間がどう誕生したかという論争についてはアダム+イブだとかダーウィンの進化論がぶつかりあっているレベルの事情は頭の隅にあったけれど、科学の力でその真実を探る段階に来ているだと改めて感じて、今までの感覚が少しUPDATEされた気がします。もちろん宗教的な視点で(アダム+イブvsダーウィン)で進化を読み解くのも面白いのだけれど、そこを科学的解明という視点に絞って遺伝子で人間を探るというのも非常に面白い。でも、この解明がどんどん進んでいったらキリスト教のアダム+イブ説はどうなるのだろうか。そんな心配不要かもしれないけれど、でもこの本を読んで個人的に(こんな私ですら)もっと遺伝的解明が広がるだろうと思ったので、必然的にそのような風潮がどこかでグンと盛り上がってくると思うんだけどなー。もうすでになっているんだろうけど、それでも今後の経過はやはり気になる。
この本によって習得した知識はそりゃ、もういっぱいいっぱいありますよ。本を読んでるというかね、教科書を読んでるイメージかなー。知識というかちゃんと頭の中にキチッと収めておきたいような事がポンポン出てくるんだよねー。だからノートを横においてちゃんとメモを取りながら読めばよかったわ、ちょっと後悔。女性同士でしか遺伝しないミトコンドリア、男性同士でしか遺伝しないY染色体ユダヤ系人種といっても数種類存在する(中でもアシュケナジと呼ばれるグループのIQが平均的にとても高い、頭がいい!)、同じ人間でも人種によって病気に対する免疫力が変わる、人類の0.5パーセントはチンギス・ハーンの子孫である、etc・・・。これさー、ちゃんと勉強したらやっぱり面白いだろうねー。研究作業って想像もつかないけれど、でも何か一つの事を解明するってすごくやりがいあるだろうね。私はミーハーだから一つのことに集中して何かをすることは出来ないと思うのだけど、でもそれをやる人の気持ちはとても分かるような気がしました。
それからもう一つ。この本のタイトルは「5万年前」ということで、万単位で時代をさかのぼるのだけれど、そう思うとさ、今2009年(約2000年として)ってさ、キリスト様が誕生してから本当にまだちょっとしか時間が経ってないんだなーと思う。最近の人って長生きでしょ。おばあちゃんとか90歳くらいまで生きてるじゃん。で、例えば、本当に例えば、0年に生まれた人がおおまかに90歳まで生きると考えると、(2000年÷90歳)で約22人前のご先祖様の時代がキリスト誕生の時だったということになる訳だよね。(もちろん昔の人の寿命はもっと短いので22人前って事はまずないのだけれど、感覚のイメージとして。)そう思うとさ、2000年ってものすごく短い時間に感じられてしまうのだよね。
と、まぁね、この本を読んで結果としてね、今までは得られなかったような新しい感覚を身に付けられたんだ。だから読んで良かったです。個人的には今後のY染色体の未来が気になり始めてしまったので、機会があれば是非次回はそちらについての専門書を読んでみようかな。(Y染色体は近年減少傾向にあって、中には将来男性はいなくなると予言している学者さんがいるらしいので。そしてちょっとそんな空気を私も感じるため。)
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