ノリーの終わらない物語/The Everlasting Story of Nory (2004)
Nicolson Baker(著)、岸本佐知子(訳)

なんでもいいから、岸本佐知子さんの翻訳した本が読んでみたくて借りてみた。1冊目は「ねにもつタイプ」だったので、翻訳本はこれが初めて(…のはず)。翻訳者で本を選んでみるっていいな、と思ったよ。それはきっと翻訳者も、自分の翻訳する本をある程度選んでいるはずで、1人の翻訳者を通してみてみると、なにかしらその選ばれた本にはその人の「色」みたいなものが見えるよね。私の場合は、モロにまどかさんからの影響で岸本さんを知ったのだけど、私も岸本さんの翻訳本好きです。ってね、まだ一冊しか読んでいないのに、「よくゆーよー」と自分でも思うんだけど、エッセイやコラムを含めて(『ヨムヨム』で読んだ)、雰囲気がとても好みです。
正直、9歳の女の子ノリーが主人公で、読み始めたときは最後まで読めないかも…と思ったりもしたけれど、読んでいるうちにノリーのお話世界をはじめ、ノリーの学校での出来事、友達関係、中国語をステキと思う気持ち、歯医者さんに憧れちゃうところなどの小さなエピソードがグングン面白くなってくるんだよね。アメリカ人としてイギリスの私立の学校に転入したノリーの視線からは、教わる勉強の細かい違いなどもたくさんあって、イギリスの実生活についてあまり知らない私などにとっては、面白かったな。それに中国系の学校に通っていたこともあって、中国の文字や歌などを「かわいい」と思っているノリーがとてもピュアに映っていて、愛着がわくんだよね。
きっと多くの人はこの著者ニコルソン・ベイカーの作品だということで、本書を手に取るひとがほとんどなんだろうな。だって、ベイカーさんはかなり大人向けの本を書くほうが得意で、『もしもし』というテレフォンセックスをお題にした本はクリントン大統領とスキャンダルになったモニカさんが、大統領にプレゼントしたという本らしいよ。それにしてもベイカーさんの写真を探してみたら、一瞬、頭の中が「9歳の女の子の世界がどこに??」という疑問でいっぱいになってしまった。だってこのおじさんよ。
さ、さ、サンタクロース??と思ってしまうけど、自分の子供を一年間観察し、その出来事から本書を書いたようです。ベイカーさんは『NewYorker』の常連ライターでもあるらしいけれど、日本で買うと『NewYorker』ってバカ高いんだよね。どうにかならないのかね、この値段。ネー。
そうそう、翻訳者で本を選んでみるってこともいいなと思ったんだけど、出版社で本を選ぶのもすごくいいと思った。出版社なんてどこも大きくて、なんでもかんでもいろいろ出版してるんじゃないのー?というのがつい最近までの私のイメージだったけれど、出版社の規模なんてさまざまで、本当に偏ったジャンルの本しかだしていないような出版社って結構あるんだね。その分、中身の濃い専門的な書籍の出版社になるから、自分好みの出版社を見つけるとそこにある本は全部読んでみたい、くらいに思えるらラインナップになってるのだね。ちなみに私、岸本さんもそうだけど、白水社の本は好みなのが多そう。
手始めに、「ふらんす」という小冊子を購入してしまった。このサイズで680円ってブルジョワだわね。中身に期待ってことだね。

※覚えたこと
TinTinはティンティンじゃなくて「タンタン」と読むらしい。えー、じゃあ、TanTanにするか、読み方をタンタンにしてよー、と思うんだけど。ノリーの好きなアニメでした。左の絵はサヴィニャック先生バージョンらしいです。