東電OL殺人事件(2003)佐野 眞一著
去年、『グロテスク』にハマり、最近田辺聖子の乃里子3部作にハマった。ものすごい勢いでこれらの本を読んだ。そして、熱中して読みすぎて目が疲れてしまい1週間ほど本が読めなくなってしまった。「オンナ」がテーマの本で、自分でもわからないところをもっといろいろ知りたくて、ズンズン読んだんだよね。まだまだ読みたい「オンナ」の本があったんだけど、乃里子3部作で体力が尽きてしまったところがって、「オンナ」のお話から離れようとおもって読んでみたのがコレ。
『グロテスク』はこの事件をもとにして書いたものだということで、やっぱり「オンナ」テーマからは離れられずに、本のアングルを変えてみたって感じだね。でも、フィクションとはやはり違って、ノンフィクションは自分が生活している世界との接点がものすごく多いから、本を読む姿勢も関心の矛先も随分と変わる。やっと、複数の本を並行して読むひとの気持ちがわかったような気がしたよ。私は基本的にごちゃごちゃには読めないんだけど、ずぅーっと同じ系統の同じジャンルの本を読んでるとさすがに疲れちゃうのよね。「しばらく本はお預けかな」と思っていたときだったのに、このノンフィクションはまたちゃんとハマって読めた。

タイトルからして、私が自分から積極的に選ぶ本ではないんだけど、『グロテスク』仲間が推薦してくれたということと、朝かばんに入れる本を選ぶ余裕がない時にたまたま本棚の一番目の前にあったというのが、きっかけかな。

感想はいろいろあるけれど、すごく大きななにかひとつが残るという感想ではないな。いろんなことをこの本ではじめて知ってびっくりした、ということが多い。警察とは思えない警察とか、日本に広がるインド(ネパール)料理屋の裏にあるインド(ネパール人)たちのネットワークとか、円山町の実態とか、モロモロ……。

でもなんとなく心に残っているのは、もうOLさんは亡くなってしまったんだから、今さらそのときのOLさんの気持ちや心情を推測して本にしたって、それはあくまで著者の推測であるということ。人は何にでも原因を求めたがるのかもしれないけど、「尊敬する父親が亡くなったことへのショック」とか「出世に対するコンプレックス」とか「心の奥で汚れたがっていた」とか、そんなこと並べたってどれも真実ではないかもしれないよ。私もそうだけど、結構いろんなことが無意識のうちに進んでいっちゃうんだよ。それは無意識という名の見えない意識なだけなのかもしれないけど、本人ですらわからないことを知らない人に分析されちゃうのってすごく嫌だろうなと思う。真実を明かすことがせめてもの償いだとかよく言うけど、この場合はどうなんだろう……。何かモヤモヤしたものが私には残るな。