沈黙 / 古川日出男 著 (1999)
時間をかけて読むタイプの本ではないね。一気にガーっと読みたいタイプ。すっぽりその世界に浸って、異次元を体験することができる本……なんだけど、私は2週間くらいかかってしまった……そこが、ちょっと残念。でも「ハマれる」要素を含んでいることは分かったのでまたいつかゆっくり読み返すといいのでしょう。一番最初の章で、ビルマとか、日本軍が、とか出てくるから、「わー、歴史系なのかー、難しいかも」と思ったんだけど(実際にこの一章を突破するまでに結構時間がかかっている)、その時代の話はほんのイントロダクションで、その後のストーリーは現代を舞台にしている。「音楽の死」「ルコ」「薫子」「獰猛な舌」、キーワードはこんな感じかな。とにかく「獰猛な舌」という言葉が気になって仕方がなかったわ。かっこいい響きだし、実際にこの舌がファンタジーなテイストももたらしてくれるし、不思議な要素もちりばめられていていいね。それから、インパクトに残ったのは、「東京」に精通している人の視点で東京を描いていること。表参道といえばシェイキーズの匂いだとか、ウェンディーズの角を曲がった食事処だとかね…。私はよく行くエリアなので、思わずうなずけるぶぶんがたくさんありました。そういうところは村上春樹さんと近いんだろうね。そして、そこがまた古川さんも村上さんも、いいところなんだよね、私にとって。本書は簡単な話ではないけど、いろんな意味で要素が入り組んでいるし、登場人物の名前もルビがないと読めないような難しい漢字がいっぱい出てくるけど、でも面白いです。さらっと読めないのが残念だけど、それは私の理解スピードがいけないのよね。ははは。