タイプライターの追憶 片岡義男 著(1987)
片岡さんが描く女性が「空気」のような感じ。実態がつかめないようで、でもすごくあたまに描きやすい女性。それは女の私からみても、常に憧れている「女性」のかっこよさとか、寛大さとか、大人なところとかが多いからかな。つまり理想として(私も)日ごろから描いている女性だからかな。この話は編集者の女性が主人公だから、それも重なってか余計にかっこよく、ステキに思えてしまった。あとがきを読んで驚いたのが、この小説の製作はほぼ男性だけで企画されて、男性だけのパワーでつくられたということ。なんで男性ばかり集まったところから、こんなステキなお話ができるのかしら。ステキっていってもロマンチックとか、わかりやすいラブストーリーとかでは全然なくて、人物以外のディティールの描写や設定がステキすぎるのよ。山の高いところにあるプールとか、無計画でいっちゃうプールとか、冬の雪が降っている日にわざと温水プールに行くとか、そういうところ。200ページのうちの前半約100ページは写真のみ、後半約100ページが本文になっている。本文と写真の絡み方もかっこいい。つながっていないようで、つながっている、それは片岡さんと写真家の佐藤さんが本来持っているセンスのような共通項があるからかな。この目に見えないつながりが感じられるのも、すごくかっこいい。
片岡さんのお父さんがほぼ英語しかはなさない日系米国人だということを、つい先ほど知った。それもあってアメリカンなテイストが感じられるのか。イイジャナイノーー。もっと読みたい。