カラスの親指 by rules of CROW’s thumb(2008) 道尾秀介


そもそも道尾さんを知ったのは、岡田くんのラジオ番組Growing Reed。初めて聞いた回が作詞家の松本隆さんで、その回に知った岡田君出演の映画「おとなり」が非常によかったことも手伝って、もう一度Growing Reedを聞いてみたときのゲストが道尾さんだった。

始めはすぐに読んでみようと思わなかったんだけど、昼休みに読む本が欲しくなって本屋に行ったら、目立つところにこの文庫本があったので購入してみた。

ラジオで道尾さんは、「(すでに数多くの作品、ミステリ作品があるけれども)なかなか自分が読みたいと思う作品がないので、自分が読んでみたい小説を書く」「なるべく映画にはならないような、できないような作品を書きたい」と語っていたのが印象的だった。
それに岡田君が、作家という印象からはかけ離れていて、ずいぶんとお若いですよね、なんて言っていたので、それも気になっていた。

ちょうど数カ月前に、私にも作家の友人ができて、やっぱり本が書きたくてそのためにいろいろと苦労をしているという話をチラリに耳にしていたので、若くして作家としてこんなに成功している人はどんな話を書くのだろうと興味も持ったというのも確かにある。

カラスの親指』。はじめのページをめくってみると、章建てはすべて英語で、それも英語の発音記号までついている。一見、近代的、近未来的なSFの雰囲気を感じ取ったのだけれど、実際は裏表紙に書いてあったとおりのミステリ(当たり前……)。

私の中でもいまいち、何が「ミステリ」というジャンルなのかあいまいなんだけれど、
人が死んだり、謎を解いたりする要素があるものがそのジャンルに入るのかな。『カラスの親指』はまさにそのジャンルで、テンポもよく、いいタイミングでグイと読者を引き込む吸引フックが効いているので、早く続きが読みたくてしかたがなくなってしまう。

本の帯には、「ど派手なペテン仕掛けてやろうぜ」とある。読んでいる最中は帯のことなんかすっかり忘れているから(本にカバーもしてあるから仕方がないと言えばそれまでなんだけど(笑))、読む前から読者に与えられている重要なこの要素をすっぽかして、本に没頭できたおかげで、最後の最後(の最後、このラストのワンプッシュ重要・読めばわかる)まであっと言う間に読んでしまった。面白かったよー。

あとがきにもあったけれど、

理想的な詐欺と理想的なマジックの違いをみなさんご存知ですか? 理想的な詐欺は、相手がだまされたことに気づかない詐欺。これが完璧な詐欺。マジックの場合はこれと逆で、マジックでは、相手がだまされたことを自覚できなければ意味がない。

というのは、なかなか普段はこういうところに着目できないけれど、言われてみるとそうだよね。わかる気がするよね。
上記とは別件で、これを読んでいる最中にムショウにおしゃぶり昆布が食べたくなりました。

最後に今気がついたんだけど、「映画にはならないほうがいい」と言っていた気がするのですが、帯には大きく「映画化決定」の文字が入っていました。これホント?